時計の取り扱い説明書クロノグラフの使い方
【初めに】クロノグラフとは
「クロノグラフ(Chronograph)」という名称は、古代ギリシア語で「時間」を意味する“Chronos”と、「記録する」を表す“Graph”を組み合わせた言葉です。その名のとおり、クロノグラフは時間の経過を計測・記録するための機能を指します。現在ではストップウォッチ機能付きの腕時計として広く知られています。
この機能の起源は19世紀初頭にまでさかのぼります。1816年、ルイ・モネが時間計測装置の原型を考案し、その後1822年にはニコラ・マチュー・リューセックが実用的なストップウォッチ機能を備えたクロノグラフを発表して特許を取得したとされています。
時計におけるクロノグラフの魅力
クロノグラフ搭載の腕時計は、見た目の精密さや機能性の高さから、特に機械式時計の分野で高い人気を誇っています。
ベゼルやサブダイヤル、プッシュボタンなど、操作性とデザイン性が両立されたモデルが多く、時計ファンの間でも定番の機能のひとつです。
また、クロノグラフは機械式時計だけでなく、クオーツ式やスプリングドライブ式など、さまざまなムーブメントにも採用されており、スポーツや日常使い、ビジネスシーンまで幅広く活躍します。

実用性とステータスを兼ね備えた機能
単なるストップウォッチではなく、精巧な内部機構がもたらす実用性と、クロノグラフ特有の複雑なダイヤルデザインが魅力のひとつです。
特に、パイロットウォッチやレーシングモデルなど、特定の用途に合わせたモデルでは欠かせない要素となっています。

クロノグラフの各部名称と役割

- ①タキメーター
- タキメーターは、ベゼルや文字盤外周に刻まれた目盛りで、速度や生産効率の計測に使用されます。語源は「タキ=速い」「メーター=計測器」。
たとえば、1kmの距離を移動するのにかかった時間から平均時速を算出できます。レーシングモデルによく搭載されています。 - ②スタート/ストップボタン
- ケースの2時位置にあるボタンで、クロノグラフ機能の計測開始と停止を行います。1回押すと針が動き出し(クロノグラフ秒針と積算計が始動)、もう一度押すと停止して経過時間が表示されます。
ねじ込み式ボタンを採用したモデルでは、ボタンをしっかりと締めることで防水性が保たれる構造になっています。そのため、防水性能を重視したダイバーズウォッチなどに多く採用されています。 - ③リセットボタン
- クロノグラフ計測を停止した後、すべての計測針をゼロ位置に戻すためのボタンです。
通常はケースの4時位置に配置されており、再び計測を始める際にはこのボタンでリセットする必要があります。

- ④クロノグラフ秒針
- クロノグラフ機能を作動させると、文字盤中央の長針(クロノグラフ秒針)が動き始め、「秒単位」で経過時間を計測します。
通常の時計の秒針とは別に存在し、スタート/ストップボタンで制御されるのが特徴です。 - ⑤30分積算計
- 1分ごとに針が1目盛り進み、最大30分までの経過を記録するためのサブダイヤルです。
通常、3時か9時位置に配置されており、料理や会議、運動など日常生活の中でも役立つ機能です。 - ⑥12時間積算計
- 1時間ごとに針が1目盛り進み、最大12時間までの経過を記録するためのサブダイヤルです。
これにより、たとえば長時間にわたる運転、イベント、ビジネスミーティングの時間を「時間単位」で記録することが可能です。
計測の仕方

クロノグラフ秒針は「スタート/ストップボタン」を押してはじめて作動し、「リセットボタン」で元の0時の位置に戻ります。
クロノグラフ秒針が1周すると60秒がカウントされ、文字盤の中にある積算計で経過「分」と「時間」がそれぞれ記録されます。
正しい使い方と注意点
クロノグラフ搭載の腕時計は、高い機能性とデザイン性を併せ持つ人気モデルですが、内部構造が複雑なため、誤った使い方をすると故障やトラブルの原因になることがあります。ここでは、クロノグラフを長く快適に使い続けるための基本的な注意点をご紹介します。
- リセット操作は「停止後」に行う
- クロノグラフのリセットボタンは、必ず停止状態で押してください。
計測中(クロノグラフ作動中)にリセットボタンを押すと、ムーブメントに強い負荷がかかり、クロノグラフ機構の故障につながる可能性があります。 - プッシュボタンは優しく丁寧に操作
- クロノグラフのスタート/ストップ/リセットボタンは精密な機構につながっています。
強く押し込むことで、内部の歯車やバネに過剰な負荷がかかり、操作不良や故障の原因になることがあります。
無理な力をかけず、そっと押すように心がけましょう。 - 測定が不要なときは作動させない
- クロノグラフは通常、長時間の計測にも対応できるよう設計されており、12時間積算計を備えたモデルも一般的です。
とはいえ、常に作動させ続けることはムーブメントへの負担や、部品の摩耗・電池の消耗につながる可能性があります。計測の必要がないときは、無駄に作動させず停止させておくことをおすすめします。