伝統と格式を極めたこれら三社に、ドイツ時計の至宝A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Sohne)、さらに時計の歴史そのものを創り上げたブレゲ(Breguet)を加えた五つのメゾンは、現在「世界五大時計」として、時計愛好家の間で究極の到達点と見なされています。これら五つのメゾンは、単に高価であるだけでなく、時計製造における複雑機構の確立、芸術的な仕上げ、そして何世紀にもわたる伝統を途絶えさせることなく現代に伝えてきました。その中でも、今回スポットを当てるブレゲ(Breguet)は、時計の進化を200年早めたと言われる「時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」を祖に持ち、現在の高級時計に備わっている技術の約7割を生み出したとも称される、まさに別格の存在です。
【クイーン・オブ・ネイプルズ(Reine de Naples)】
レディースウォッチの歴史を語る上で欠かせないのが「クイーン・オブ・ネイプルズ(Reine de Naples)」です。1810年、ナポリ王妃カロリーヌ・ミュラからの注文を受け、アブラアン=ルイ・ブレゲが製作した「史上初の腕時計」を現代に蘇らせたコレクションです。最も目を引くのは、美しい卵形のオーバルケースです。女性の手首をしなやかに、そして華やかに彩るこの形は、他ブランドにはない唯一無二の存在感を放きます。文字盤にはマザーオブパール(真珠母貝)やエナメル、ダイヤモンドが贅沢にあしらわれ、リューズ(時刻を合わせるつまみ)が4時位置に配置されるなど、遊び心のあるアシンメトリーなデザインも魅力です。機械式時計としての高い性能を保持しながら、ジュエリーとしての美しさを極めたこのモデルは、自立した大人の女性から圧倒的な支持を得ています。
まず挙げられるのが、「伝統と革新(Innovation and Tradition)」の両立です。ブレゲは自らの歴史を非常に大切にしています。現在販売されている時計の多くが、200年以上前に創業者が考案した意匠を採用しています。しかし、中身は決して古臭いものではありません。磁気の影響を受けにくい「シリコン製」のパーツをいち早く導入したり、高振動で精度を高める技術を開発したりと、常に業界の最先端を走り続けています。「過去の美学を、未来の技術で表現する」ことこそが、ブレゲの真骨頂です。
ブレゲの魅力は、伝統的な意匠と最先端技術の融合にあります。針の先端に穴が開いた「ブレゲ針」や精緻な「ギヨシェ彫り」など、一目でそれと分かる不変のデザインコードを継承。代表作には、フランス海軍御用達の歴史を汲むスポーティな「マリーン」、究極のドレスウォッチ「クラシック」、ムーブメントを露出させた前衛的な「トラディション」、そして海軍航空隊の系譜を継ぐ「タイプ XX」など、多彩なコレクションを誇ります。一生モノの資産としても価値が衰えないブレゲ。時を超えて愛される芸術的な輝きを、ぜひその手でご堪能ください。