1910年、ガブリエル・ココ・シャネルがパリのカンボン通りに帽子店「シャネル・モード」を開いたことから、その物語は始まりました。「シンプルで機能的、そして洗練された美」を理念に掲げ、モード界に革命を起こしたシャネルは、ウェアやバッグ、香水といった領域で独自のスタイルを築き上げ、世界中の女性たちを魅了してきました。
その革新の精神は、やがて時計製造にも注がれることになります。1987年に発表されたブランド初の腕時計「プルミエール」は、香水「No.5」のボトルストッパーやパリ・ヴァンドーム広場を思わせる八角形のケースを採用し、ファッションメゾンならではの美意識を体現しました。さらに2000年には、セラミック素材を斬新に取り入れた「J12」が登場し、モードと機能性を融合させた新時代のスポーツラグジュアリーウォッチとして高い評価を獲得します。
近年では、スイスの時計製造技術を背景に、自社開発ムーブメントを搭載した本格機械式モデルや複雑機構のタイムピースも発表し、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ（GPHG）での受賞など、時計界においても確固たる地位を築きつつあります。
シャネルの時計は、ファッション性と時計製造の精緻さを兼ね備えた「身につける芸術品」であり、時代を超えて受け継がれるラグジュアリーウォッチとして、今なお進化を続けています。

シャネル プルミエール（Premiere）
1987年に発表された、シャネル初の腕時計モデル。八角形ケースはパリ・ヴァンドーム広場やシャネルNo.5のボトルストッパーから着想を得たもので、ブランドの美意識を象徴します。エレガントなチェーンブレスレットやシンプルな文字盤が特徴で、ジュエリー感覚で着けられることから、女性を中心に長く愛され続けています。

シャネル J12（ブラック & ホワイト）
2000年に登場したブラックセラミックモデルと、2002年のホワイトセラミックモデルは、シャネルのアイコンウォッチとして世界的な人気を獲得しました。高耐性ハイテクセラミックは傷に強く、光沢感が長く保たれるため、日常使いでも美しさを維持できます。自動巻きムーブメント搭載で、防水性にも優れたスポーツラグジュアリーの代表格です。

シャネル J12 クロノグラフ
2003年に追加されたクロノグラフ仕様は、スポーティさと高級感を兼ね備えたモデル。自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載し、直径41mmの存在感あるケースが男性にも人気です。ホワイトセラミック、ブラックセラミックの両方で展開され、ファッション性と機能性を両立しています。

シャネル ボーイフレンド（Boy Friend）
2015年に誕生した角型ケースのレディースウォッチ。直線的でミニマルなデザインは、男性用時計のエッセンスを取り入れつつも女性らしい華やかさを持ち合わせています。ストラップにはアリゲーターやツイードなど多彩な素材が使われ、オン・オフ問わず使えるのが魅力です。

シャネル ムッシュー ドゥ シャネル（Monsieur de CHANEL）
2016年に発表されたメンズ向けハイエンドモデル。完全自社開発のCal.1を搭載し、ジャンピングアワーとレトログラード分表示という高度な機構を採用。スイスの時計製造技術とシャネルのデザイン哲学が融合した一本で、時計愛好家からの評価も高いモデルです。

1910年：パリに帽子店「シャネル・モード」創業
1987年：初の腕時計「プルミエール」発表。八角形ケースはパリ・ヴァンドーム広場やNo.5のボトルストッパーから着想。クォーツムーブメント搭載。
1993年：スイスの高級時計製造会社 G&F Chatelain 社を買収し、自社製造体制を確立。
2000年：高耐性ハイテクセラミック製「J12」発表。ブラックセラミック採用で防傷性・防水性を備える自動巻きモデル。
2002年：「J12 ホワイト」登場。ブラックに続きホワイトセラミックを採用し、女性需要を拡大。
2003年：「J12 クロノグラフ」発表。自動巻きクロノグラフムーブメント搭載でスポーツラグジュアリーを強化。
2005年：「J12 トゥールビヨン」発表。シャネル初の複雑機構モデルで、高級時計市場での地位を確立。
2008年：「J12 キャリバー3125」発表。オーデマ ピゲと共同開発した自動巻きムーブメント搭載。
2013年：「J12 クロマティック」発表。チタンとセラミックを融合した独自素材「チタニウム セラミック」を採用。
2015年：「ボーイフレンド」登場。直線的な角型ケースとミニマルデザインでメンズライクな魅力を提案。
2016年：「ムッシュー ドゥ シャネル」発表。完全自社開発ムーブメントCal.1搭載の男性向け高級モデル。
2018年：「コード ココ」登場。2.55バッグの留め金モチーフを取り入れたジュエリー感覚の時計。
2019年：「J12」フルモデルチェンジ。ケース構造やラグ幅を改良し、自社製Cal.12.1（KENISSI製）を搭載。
2020年：「J12 パラドックス」発表。ブラックとホワイトのセラミックを大胆に組み合わせた2トーンモデル。
2022年：「J12 ダイヤモンド トゥールビヨン」発表。自社製Cal.5搭載、トゥールビヨンに1粒のダイヤをセット。
2023年：「ムッシュー ドゥ シャネル スケルトン」発表。完全スケルトン仕様で高級メンズウォッチの存在感を強化。

シャネルの時計は、単に時間を計測する道具ではなく「装いの一部」として存在します。ファッションと時計製造の融合、そして細部まで宿る美意識は、ジュエリー同様に「身につける芸術」としての価値を持ちます。
また、「見えない部分にこそ美を宿す」という理念は、ムーブメントの仕上げやケース裏面のデザインにも表れています。外装の華やかさだけでなく、内側の精密さも手を抜かない姿勢が、時計愛好家からも評価されています。

シャネルの時計はファッションブランドの中でもリセールバリューが高い部類に入り、特にJ12は市場での流通量・需要ともに安定しています。ブラックやホワイトの定番カラーは価格下落が緩やかで、状態や付属品の有無によっては高値での買取も可能です。
限定色や宝飾モデルは希少性が高く、発売直後は定価を超えるプレミア価格が付く場合もあります。一方でファッション性の高いモデルは流行に左右されやすいため、購入時は将来の売却も視野に入れてカラーや仕様を選ぶのがおすすめです。
中古購入の際は、セラミックの欠けや傷、ブレスレットの伸び、ムーブメントの整備履歴を確認することが重要です。特にシャネルの純正パーツは入手に時間がかかる場合があるため、アフターサービス体制が整った販売店を選ぶと安心です。